118 各種事業
5-10 若手研究者招へい事業〜東アジア首脳会議参加国からの招へい〜
5-10-1 全体趣旨
本事業は,安倍晋三内閣が第2回東アジア首脳会議(E A S 2007)の時に提唱した,E A S 参加国から今後5年間, 毎年 6,000 人程度の青少年を日本に招へいする交流計画(J E N E S Y S プログラム)に基づいた J S P S の事業である。次 世代を担う若手研究者の計画的な交流により,アジアを中心とした国々との研究者間のネットワークの形成・強化, 当該地域における高度人材育成及び科学技術コミュニティの形成等が期待される。対象国は A S E A N 加盟国(インド ネシア,カンボジア,シンガポール,タイ,フィリピン,ブルネイ,ベトナム,マレーシア,ミャンマー,ラオス) であるが,全体の 30% 以内であれば,オーストラリア,ニュージーランド,インドを含めることが可能である。1 年あまりの中断期間を経て,2008年度後期より3期にわたって実施されてきた J S PS - J E NE S Y S の第4期プログラム が 6 月 よ り 実 施 さ れ, 分 子 研 は 過 去 3 期 に 引 き 続 き, 実 施 研 究 機 関 と し て 採 択 さ れ た。 中 断 期 間 中 に 実 施 さ れ た J A S S O- J E NE S Y S プログラム,分子研独自プログラムである E X OD A S S プログラムと合わせると,同種のプログラム は6期目となり,本プログラムはすっかり分子研に定着した感があるとともに,東南アジア諸国にとっても,若手研 究者における重要なキャリアパスのひとつとして認識されるようになってきている。
5-10-2 分子研主催プロジェクト課題について
プロジェクト課題名は,「『環境・エネルギー』基礎研究基盤の確立」である。
現代自然科学が解決すべき問題のひとつである環境・エネルギー問題において,東アジア諸国における自国での研 究開発を可能にするための基礎研究基盤の確立は極めて重要である。本交流事業においては,環境・エネルギー問題 に関わる基礎科学に関して,主として学位取得前後の若手研究者を広く招へいし,また本交流事業後のフォローアッ プとしての共同研究体制を確立し,自国における基礎研究の継続を力強くサポートすることで,基礎科学の定着を推 進することを目的とする。
分子科学研究所は,国際交流の重要性に鑑み,かねてより様々なチャネルを通じて国際共同研究,研究支援,教育 事業を推進してきた。本交流事業は,教育事業に特化した「アジア冬の学校」を研究者養成事業へと発展し,最終的 には,既に基盤研究機関が充実している極東アジア諸国間で形成している研究教育拠点ネットワークを東アジア諸国 へ伸展させる,橋渡し的事業となることが期待される。
5-10-3 実施状況
第4期では,24研究室(うち分子研22,所外2)を受入研究室として指定し,公募を原則とした募集を行った。 各候補者に対し,research. proposal および帰国後の future. plan の提出を求め,その妥当性や将来性等に関して審査する ことにより決定した。
実際の募集は,
(1) 指定交流相手機関からの推薦(学内公募を原則) (2) ホームページを利用した公募
の順で行った。指定交流相手機関は以下の通りである.:チュラロンコーン大学,カセサート大学(タイ),マラヤ大 学(マレーシア),南洋工科大学,シンガポール国立大学(シンガポール),ベトナム科学技術アカデミー(ベトナム)。 また前回に引き続き,継続的な基礎研究,共同研究を奨励する目的で,過去の参加者の中から希望者に対し,再度 research. proposal および帰国後の future. plan の提出を求めて審査を行い,招へい費用の一部を援助し,再来訪による共
各種事業 119 同研究の継続を支援する「revisit.program」も同時に募集した。
今回は採択決定から公募,採択までの期間が極めて短かったのだが,わずか2週間弱の募集期間で,さらにリサー チプロポーザルの提出を求めているにもかかわらず,過去最高の7カ国,61名の応募が集まった。またその提案内 容もこれまで以上に充実していたため,指定交流相手機関とホームページ応募の全ての候補者を同列に扱い,審査を 行った。その結果,予定の12名より多い16名を最終的に採択し,分子研をはじめ,協力機関である大阪大学,甲南 大学に招聘した。内訳はタイ10名,インド2名,マレーシア,ベトナム,インドネシア,フィリピン各1名である。 これまでと同様タイからの採択が最も多くなった。このことは,タイ国内において既に本事業が高い評価を受けてい ることを意味しており,実際非常に多くの応募がタイから寄せられている。またキャリアの内訳は,博士研究員4名, 博士課程学生12名と,大学院生中心の構成となった。
招へいは,2011年8〜10月にかけて実施され,各研究者に応じて,29〜72日の期間での研究プログラムが組 まれた。また10月11日に,全員の招へい者を一同に会し,全体会議とミニシンポジウムを開催した。本プログラム の大きな目的のひとつとして,将来にわたるアジア分子科学ネットワークの形成があり,各国の同世代の若手研究者 の横のつながりを形成する上でこの全体会議の役割は非常に大きい。既に9月に開催された第14回アジア化学会議 においても,J E NE S Y S 関係者の各方面での活躍が見られた。
このように,本プログラムによってまかれた種は東南アジア諸国で確実に根付いており,アジア地域における分子 研のプレゼンスと分子科学ネットワークは確実に強化されている。安倍政権時に提案された本 J E N E S Y S プログラム はひとまず終了となり,今後の後継プログラムについての詳細はまだ不明であるが,独自事業の E X OD A S S プログラ ムをはじめ,様々なチャネルを利用して,今後の継続が望まれるところである。